2008年9月20日土曜日

『最後の戦国武将 伊達政宗』展

 塩竃神社博物館に行くと、何故か次ぎに行きたくなるのが『仙台市博物館』。現在『最後の戦国武将 伊達政宗』展が開催されている
  今回、仙台市博物館に足を向けたのは、刀剣と糸巻太刀拵、そして現在開催されている企画展『最後の戦国武将 伊達政宗』が目的。刀に関してはあまり期待出来ないが、糸巻太刀拵は常設展示されているはずだし、企画展の面白さは鉄板だと思う。何も感動が得られないわ けは無いので、いざ入館。

 …残念ながら、刀剣類は一口も展示されていなかった。正直がっかりしたが、気を取り直して他の展示物を楽しむことにする。
 常設展示では、先ず博物館の目玉の一つである『金梨子地葵紋桐紋糸巻太刀拵』をじっくりと見る。もったいないことに今までサラッとしか見ていなかった。 傷みが激しいため新しく拵を作り、オリジナルから漆を剥がし移植したそうだ。糸巻太刀拵は四角の透明ケースで展示されているので、正規の見方ではないが四 方八方から見ることが出来た。丁度、糸巻太刀拵の裏には柳生宗矩が政宗へ宛てて送った書状が展示されていた。内容はといえば、参勤交代で江戸へ着いた政宗 に、宗矩がお茶のお誘いをしたというもの。一体どんな話をするためだったのだろうか…?

 さて、企画展だが、六つのスペースに分けて政宗所縁の品々が展示されており、エピローグと題された初っ端が特に良かった。政宗公所用の『黒漆五枚胴具 足』が『白地赤日の丸旗』をバックに飾られていた。前回は五~六領の具足が展示されていたのだが、一領だけでしかも日の丸の前というのが逆に映える。ス ター・ウォーズのダース・ベイダーが冠るマスクのモデルとなったという『六十二間筋兜』。吹返には梅紋を透かしており、私が鍔で最も好きなデザインであ る。前立の弦月がまるで腰反りの太刀にも見える。同じスペースの『白絹宿地雪薄紋単衣』と『納戸地緞子雲文袴』(二領とも10月10日までの展示)も素晴 しい。
 他には企画展示室に

・紫糸威胴丸(伝伊達政宗所用)
・銀伊予白糸威胴丸具足
・鉄錆地五枚胴(伝鈴木元信所用)
・黒漆五枚胴具足(片倉重綱所用)

 の五領が展示されていた。『黒漆五枚胴具足』と『銀伊予白糸威胴丸具足』は360°どこからでも好きに見られるのが有難い。
 今回、最も印象に残ったのは、濱田景隆所用の『浅葱麻地小紋染鎧下着』だった。これは濱田景隆が宮崎城攻めで討死した時に着用していた鎧下着で、血痕や生地の破れが戦の壮絶さを物語っている。破れた箇所に受けたのは刃物か銃弾か。

 武具や衣類の他、書状、絵画など仙台公縁の興味深い品々が多数展示されており、一度と云わず何度でも会場に足を運ぶ価値があると思う。10月11日から『黒漆五枚胴具足』二領や『山形文様陣羽織』、『黒羅背板地胴服』の四点が追加展示されるそうだ。こちらも楽しみ。
 展示物を見ている間、或いはその後、凡そ三百数十年前の仙台にロマンを思い馳せるのは必至だと思う。展示物を一通り見学し、伊達政宗のスケールに触れた気になり、仙台公の入神後に国包が入道した気持ちが少しわかったような気がした。

2008年9月15日月曜日

塩竃神社博物館の糸巻太刀拵

 何か初見の刀があればいいなと、久々に塩竃神社博物館へ。
 
 
 あまり期待しないで行ったのだが、残念ながら初見のものはなく、刀剣の展示数も少なかった。正月の『雙龍子玉英 特別展』と比べてしまうと、どうしても物足りなさを感じる。その代わりに博物館の目玉である『来国光』と『雲生』の二口、『糸巻太刀拵』のコーナーを穴が あくほど見ることにする。

・太刀  来國光 83 3.5
・太刀  雲生 92.1 3.5
・刀 (菊紋)一 奉納造鹽竈大明神 神釖一腰 同所住御硑高橋善助磨是 寛文四年七月十日
   (ウラ)奥州仙臺住田代摂津守藤原永重作 弟子重則重清
・太刀 家定 71 2.24
・太刀 國包(ウラ)天保十三歳八月日 69.7 2.1 (十二代 源兵衛)
・脇指 重勝 51 1.1
・刀 包幸 75.8 1.7
・剣 奉納寶剣一振 家定 塩竈大明神御廣前(ウラ)元禄九年二月吉日 仙䑓住福田助左衛門 24.2
・短刀 田代永繁 21

 屏風や掛け軸が幅をきかせており、「それだけあれば三~四口の刀が展示できるな」という位のスペースを独占していた。大太刀も初め見たときはインパクトがあったが、鍛えなど見所がないので何度か見ると飽きてしまう…。

 今までは展示されていても、それほど熱心に見ることの無かった『糸巻太刀拵』を、今日は一生懸命に見学してきた。以前は刀身に比べると勉強不足のせいも あってか、外装への関心が薄く、小道具に関しては興味が殆ど無かった。それが室町時代の『文透図鍔』に一目惚れしてから鍔が好きになり、明智左馬介の差料 と伝える『明智拵(変り塗打刀拵)』を知ってから漸く拵について勉強するようになった。
 展示されていたのは糸巻太刀拵が二腰、鍔が三枚でそれぞれ職人による作品の出来の違いを比べられて面白い。
 拵は兜金、縁、鍔、足金物、責金物、石突金物とそれぞれ赤銅魚子地に菊紋があしらわれていて非常にエレガント。特に鞘は金梨子地塗で赤銅魚子地と菊紋が アクセントとなり、色彩の対比が鮮やか。それにしても佩緒の太刀結びは一体どうなっているのか見当もつかない。柄は朴の木地に錦の布を巻き、その上に紺の 柄糸を巻いている。渡巻も同色。鍔は糸巻太刀拵の定番『葵形』。私は丸形のシンプルな鍔が好きなのだが、この葵形の鍔も素敵だと思った。鍔は三枚の他に 『鍔、切羽、大切羽一式』としてもう一枚有り、それぞれが分解された状態で並べられていた。金と赤銅の切羽、大切羽の計八枚で鍔を挟むそうだ。
 
 刀の他に具足が二具展示されており、メインは四代藩主綱村公所用の『紺絲素懸威五枚胴具足』なのだろうが、私は伊達家宿老、遠藤玄信所用の『切付小札紺 絲毛引威二枚胴具足』の方が好みだ。どうやら私の中で紺糸ブームが始まったようだ。半歩身体を引いてガラスに顔を映し、兜に顔の位置を合わせ、鎧を疑似装 着してみる。一度でいいから具足を身に纏い太刀を佩いてみたいものだ。果たして巧く刀を扱えるだろうか。具足は20センチ程の重さがあるというから動くだ けでも大変そうだし、刀を振りかぶろうとして、鍔が兜の前立に当たってしまうかもしれない…。それ以前に巧く太刀を抜けるだろうか…。