2010年8月15日日曜日

終戦記念日の博物館巡り

 連休の後半、道路の空いている頃を見計らって恒例の東京刀剣ツアーへ。

 いつもは『東京国立博物館』と『刀剣博物館』の二ヶ所を訪れるパターンだが、今回はもう一ヶ所、見学地を追加する予定。
 最悪、Uターンラッシュは今日までかもしれないと覚悟はしていたが、特に渋滞に巻き込まれるようなことは殆どなかった。おかげで燃費効率の良い走りが出来た。





 栃木で車内へ急に闖入したスイッチョン。失礼、栃木ではケサカッカでしたか。東京まで連れて行こうかと思ったが、途中でいなくなってしまった。


 折角早めに上野に到着したのに、中々駐車場が見つからず、おまけに駐車場から博物館までの距離が遠くて相当タイムロスしてしまった。午前中に入館できるようにしたい…。




 漸く『東京国立博物館』へ辿り着き、さっさと入館し、早速『刀剣』コーナーへ。

・剣 無銘
・太刀 髙綱
・短刀 吉光(名物 厚藤四郎)
・太刀 包永
・短刀 備州長船住兼光
・太刀 雲生
・刀 (金象嵌銘)城和泉守所持 正宗磨上 本阿(花押) (名物 城和泉守正宗)
・短刀 則重
・太刀 備州長船盛光(ウラ)応永廿三年八月日
・刀 備前國住長船次郎左衛門尉勝光 同左京進宗光
・太刀 國廣
・刀 石堂運壽是一作(ウラ)嘉永六年八月日

 今回展示されていたのは切刃造の剣、古備前『高綱』、粟田口『平野藤四郎吉光』、手掻『平三郎包永』、景光の子『兼光』、宇廿『雲生』、相州『五郎入道 正宗』、越中『九郎三郎則重』、師光の子『修理亮盛光』、祐光の子『右京亮勝光・左京進宗光』、『堀川国広』、『七代石堂是一』など十二口。特に高綱は珍 しい。名物は『厚藤四郎』と『城和泉守正宗』。

 次は二階の『武士の装い』コーナー。

・黒漆銀銅蛭巻太刀拵
・菊造腰刀拵
・太刀 無銘(号北条太刀)
・三鱗紋兵庫鎖太刀拵(号北条太刀の拵)
・太刀 無銘(菊紋)(伝後鳥羽上皇御作)
・黒漆打刀拵(伝後鳥羽上皇御作の拵)
・太刀 國宗
・桐紋蒔絵糸巻太刀拵(國宗の拵)
・長刀 備州長船住元重(ウラ)建武五年三月日
・大笹穂槍 下坂孫次郎(ウラ)慶長拾六伏見三年在番之時長坂茶利九郎ウタスル也

 北条氏が三島大社に奉納したという『号北条太刀』は無銘の福岡一文字。菊紋の太刀は『菊作』、『菊御作』と謂われ、後鳥羽上皇の御作と伝わる。『備前三郎国宗』は新藤五国光の師、或いは父とも。
 もう一度、一階の刀剣コーナーと二階の『武士の装い』コーナーを見て廻り、このあとの予定のために早めに切り上げることにする。


 『刀剣博物館博』では現在、『古刀新刀名作展~豊かなる鉄の味わい~』が開催(平成22年6月29日~10月24日)されている。




・短刀 吉光
・短刀 貞興
・太刀 兼永
・短刀 来國次
・脇指 長谷部國信
・刀 (金象嵌銘)尻懸則長磨上之 本阿(花押)(光室)
・脇指 無銘(伝 正宗)
・短刀 兼友
・太刀 月山作
・刀 冬廣作
・太刀 真景
・太刀 信房作
・太刀 長光
・太刀 真長 (附)黒石地腰印籠刻青貝微塵塗鞘桐紋散金具半太刀拵
・刀 無銘(伝 近景)(金象嵌銘)笹之雪
・太刀 備州長船盛光(ウラ)応永十二年八月日
・短刀 清綱
・太刀 豊後國僧定秀作
・短刀 山城國西陣住人埋め忠明壽(花押)(ウラ)慶長拾七年八月日
・刀 國廣
・脇指 出羽大掾藤原國路(ウラ)寛永七年八月吉日
・脇指 津田越前守助廣(ウラ)延宝六年八月日
・短刀 繁慶
・刀 奥州仙䑓住國包(ウラ)寛文五年三月吉日
・刀 (一葉葵紋)主馬首一平安代
・刀 荘司筑前大掾大慶藤直胤(花押)(ウラ)文政四年五月日
・刀 豊永東虎左行秀 為嫡子幾馬(ウラ)明治三年二月吉日 行年五十八歳造之
・刀 津田近江守助直(ウラ)元禄二歳二月日 以地鉄颪造之
・脇指 長曽祢興里真鍛作
・刀 肥前國近江大掾藤原忠廣
・刀 長幸於摂津國作之(ウラ)以幡州完栗鋼鉄作之
・短刀 越前國康継 本多飛騨守所持内(ウラ)なんはんかね 三条こかぢ迫

・太刀 俊平 昭和五十五年十月廿二日 昭和五十三年度操業日刀保タタラ玉鋼試作刀
・脇指 以日立新玉鋼 宮入行平作 昭和五十二年正月

 何といっても『真景』が一番よかった。大好きな板目物なのだが、初めて見る名前だ。解説によると平安末期の伯耆鍛冶だという。『舞草』の太刀を見たとき以来の「グッと来る」感動である。本当に東京へ来てよかった。暑い思いをして代々木へ来てよかった…。
 前回の『鈴木嘉定コレクション』で見た覚えのあるものが数口あったのが気になったが、良いものは何度見てもいいのだ。
 もっと見ていたいところだが、もう一ヶ所廻らなければならないので、この場を後にすることにする。名残惜しいが、また今度改めて来よう。


 そして、最後の一ヶ所とは…靖國神社の『遊就館』である。以前から行ってみたいと思っていたのだが、要領が悪いために『東博』と『刀博』の二ヶ所を見る だけで精一杯で、『遊就館』まで行く余裕はなかった。『東博』か『刀博』のどちらかを諦めようとも思ったが、結局できなかった。 今日まで果たせずにい た。せっかく終戦記念日に上京するのだから、是非とも『遊就館』を拝観しようと思い立ったわけである。といっても目的は飽くまで刀なので、

 市ヶ谷駅を降りて、取りあえず大通りを進んだが、自信がない。「靖國神社→」とか案内が有っても良さそうなものだが、これが全くない。段々不安になって くるし、時間に余裕もないし、このまま歩き続けていいものかと考えていたら、左手に緑が見えた。神社に付きものの鎮守の森かなと思い、とりあえず其方へ向 かうが、ただの川沿いの緑地らしかった。しようがないので手前で右折し、両側を学校に挟まれた道をしばらく行くと、数人の警官が立っている。初めは事件か 事故かなとも思ったが、更に進むと数人の警官と機動隊バスを見つけ、靖國神社の警備だと気づく。右手が神社の敷地であるという確信を得るが、今度は入り口 がどこかわからない。前方に目をやると丁字路になっており、道路の前で塀が途切れて、路上に立番する警官とバリケードが見える。「ここを右に曲がったほう がいいような気がするが、立ち入り禁止かもしれないがどうしよう…」と迷っていると、普通に進入する一般人がいたので、ドキドキしながら右折する。すぐ先 には大きな門が見えるではないか。どうやら神社に到着したらしい。しかし、この門は北門らしく、直ぐ右手に『遊就館』が有ったので探す手間が省けた。結果 的オーライということか?結局、大通り(靖国通り)をあのまま真っ直ぐ進めばよかったのに、途中で左折したために靖国通りの真裏を迂回するハメになってし まったようだ。





 終戦記念日のためか、もう夕方の四時だというのに多くの参拝客が神社を訪れていた。





 かの『今井長賀』はここ遊就館の取締役だったことがあるそうで、また明治三十一年から五年間、遊就館で『剣話会』の講師として、別役成義と二氏で刀剣の 講話を行っていたそうだ。講話の内容は速記録を基に『剣話録』として刊行され、後に『今村別役刀剣講話(辻本直男監修)』が改めて発行されている。

 『遊就館』の玄関ホールは沢山の人で賑わっていた。戦闘機や機関車が展示されているのには驚いたが、先ずは受付を済ませ、エスカレーターで二階へ上がる。
 展示室1『武人のこころ』では元帥刀が見事にショウアップされている。

・太刀 笠間繁継(元帥刀)

 元帥刀というと西洋風のサーベルのような軍刀を連想してしまうが、展示されていたのは純然たる日本刀と大昔の衛府の太刀を思わせる姿の拵であった。た だ、刀身は一般的な鋒造ではなく諸刃鋒造で、拵は毛抜形太刀。柄は毛抜形の目貫が据えられており、中子共々も毛抜形に刳り抜かれているわけではない。正 直、軍刀には全く興味がないのだが、眼前にある元帥刀には心惹かれてしまった。特に地板の色合いが印象的だった。それにしても、刀身の形状を諸刃鋒造にし たのは何故なのだろうか?かつて大将軍の絶対的な権限の象徴として、出征する将軍や遣唐使へ節刀を授与していたが、元帥刀はそれに習ったものだろうか。元 帥刀は「国家・国民守護の象徴」として元帥府の大将に下賜されたそうだ。『笠間繁継』は『水心子正秀』の門人『中山一貫斉義弘』の系統で、『繁寿』の弟子 で『宮入昭平』の師だそうだ。

 次は展示室2『日本の武の歴史』。刀剣や甲冑など、戦前の武具が時代を追って陳列されている。勿論、目当ての刀剣類はこの展示室にあるのだ。

・太刀 帝室技藝員月山貞一八十一歳謹作
・太刀 國継
・脇指 無銘(包丁正宗)
・刀 (金象嵌銘)青江
・刀 村正
・大太刀 備州長船盛光
・大太刀 九州筑前住源信國助左衛門尉吉包(ウラ)寛文十二年八月吉日
・槍 水心子正次作
・長巻 九州筑前住人源信國平四郎作
・脇指 越前國康継作
・刀 陸奥守大道
・刀 肥前國忠吉
・刀 民龍子壽實(ウラ)文化八年八月日
・脇指 次郎太郎直勝(ウラ)天保四年十二月日
・脇指 水心子正秀(花押)(ウラ)寛政九年八月日
・靖國刀 靖光謹作
・靖國刀 (金象嵌銘)靖光謹作(ウラ)昭和十二年九月吉日靖國神社第七代宮司大野俊康所持平成八年十二月八日識

・毛抜形太刀(模造 宮口正房製作)

 
 『国継』の名を今日初めて知ったが、古刀期に大和や備前に五人の同名鍛冶がいたようだ。
 『包丁正宗』は大味というか、これといって見るべき所が無く少々ガッカリした。全体的に鈍い銀色で、彫り物がなんだか道教の札の様な印象を与える。

 その後、日本の戦争の歴史を展示物と共に順に追っていく。一階に下りると英霊の写真や遺品が多く展示されており、それを見るのがとても辛かった。失礼とは思いながらも、閉館時間が迫っていたので、駆け足で館内を一通り見学して歩いた。




 そろそろ時間なので、南門を出て靖国通り通って帰る。

 
 翌日、真景のことを調べようと思ったが、図版どころか名前すら見あたらなかった。十月には国立博物館の刀剣コーナーが入れ替えられるようなので、その時にもう一度真景を見に刀剣博物館へ行きたいと思う。
 スマートフォン欲しい…。